第246章 彼は恐れている

 浅野莉緒は視線を落とした。

 玄関のあたたかな灯りがふわりと広がり、部屋いっぱいに紅と淡い金の色味を浮かび上がらせている。

 ベッドには紅色の布団。表には蔓草が絡み合う連理の文様が刺繍され、針目は驚くほど細かい。光を受けて、しっとりとした絹の艶がにじんだ。

 テーブルの上では一対のキャンドルが静かに燃えている。炎がゆらりと揺れ、ほのかな薔薇と白檀の香りが漂った。

 カーペットには花びらが少しだけ散らされている。多くはない。けれど玄関からベッドの脇まで、ちょうど一本の道になるように続いていて――誰かが一歩一歩の距離まで計ったみたいだった。

 莉緒は呆然と立ち尽くし、ふいに目の奥が熱...

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