第31章 ここは私の家じゃない

 吉野結人は彼女の言葉にぐっと詰まり、反論の糸口すら見つけられなかった。

 数秒の沈黙ののち、彼は中川さんのほうを向く。

「まだある? 俺にも一杯、よそって」

 中川さんはぱっと目を輝かせ、「ありますあります」と何度も頷きながら小走りで部屋を出ていった。

 ほどなくして、スープが吉野結人の前に置かれる。

 夫婦はベッドを挟むようにそれぞれ腰を下ろし、黙ったままスープを口に運んだ。言葉はひとつも交わされない。

 一杯飲み干すころには、莉緒の体にようやく少し力が戻っていた。

 彼女は器を置き、掛け布団をめくってベッドから降りようとする。

「どこ行くんだ」

 吉野結人がすぐに問う...

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