第40章 私がミシェルです

吉野結人に、いっそ聞いてみたかった。人の痛みがわからないのは――世の冷たさも温かさも、とうに噛みしめてきた自分なのか。それとも、吉野結人に甘やかされ、酒の瓶ひとつ自分で開けなくてもいい小林莉那なのか。

 莉緒はふっと、喉の奥で笑った。

「去年の冬。あなたの奥さん、家で高熱を出して、バスルームで倒れたの。使用人に見つけられるまで四時間。病院に運ばれて、入院は半月」

 莉緒は顔を上げる。彼を見る瞳から、最後の水気がすっと消えた。

「そのときあなた、忙しかったんでしょうね。心配の電話一本も、なかったくらいには」

 そして、淡々と続ける。

「なのに――幼馴染の胃の具合がどれくらい深刻かは...

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