第54章 子どもがまだいること、言うつもりはないのか?

 一歩踏み出したところで、吉野結人ははっとした。病室のベッドに横たわる莉緒のことを思い出し、困ったように踵を返す。

「莉緒……莉那がさ……マンションのほうから連絡があって。朝からずっと音沙汰がないらしい。管理会社も繋がらないって……何かあったらって思う。ちょっと様子を見に行ってくる。すぐ、すぐ戻ってくるから。戻ったら、ちゃんとそばにいる」

 ――たった半日、連絡がないだけで、こんなにも焦る。

 あの女が、彼にとっての「大切」なのだ。

 じゃあ自分は?

 莉緒はふと思った。昨日、自分がこのまま死んでいたとしても――吉野結人が気づくのは一週間後かもしれない。

 ……それ以上かもしれな...

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