第55章 一人少なく知れば、それだけ安全が増す

 莉緒は疲れ切ったように首を横へ振った。

「……ううん。お義母さんに、まだ赤ちゃんがいるって知られたら、きっと私を守ろうとしてくれる。私と子供のために、あの身体を引きずってでも吉野結人や小林莉那とぶつかろうとするはず……でも、今のお義母さんにそれは無理だよ。耐えられるわけがない」

 言葉を切り、指先が無意識に下腹へと重なった。まだ平らなそこには、彼女の希望のすべてが宿っている。

「知ってる人が増えたら、そのぶん、私の“出ていく”計画は危なくなる。渚……私、もう賭けられない」

 早川渚は、莉緒の青白く痩せた横顔を見つめ、胸の奥がきゅうっと痛んだ。

 冷え切った手をぎゅっと握りしめ、強...

ログインして続きを読む