第86章 愛はいつしか深まり、思いは募るばかり

安藤里穂は、その光景を頭の中でなぞっていた。

 陽だまりみたいに明るくて、笑うとひどく優しそうな少年――吉野結人。確かに、のちに冷淡で近寄りがたい「吉野社長」と同一人物だなんて、すぐには結びつかない。

 けれど、いい時間は長く続かなかった。

 たったひと夏が過ぎただけで、再会した彼はまるで別人になっていたのだ。

 ほんの数十日。結人の中から、あの柔らかな日差しが消えた。口数は減り、影をまとい、人を見る目は氷みたいに冷たく――刺がある。

 当時の浅野莉緒は、そんなことを理解できなかった。以前と同じように、嬉しそうに駆け寄って、

「結人兄さん!」

 そう呼んだ。

 なのに彼は、ま...

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