第90章 莉緒、君なのか

 彼は番号をいくつも替え、何通もメッセージを送り、何度も電話をかけた。けれど返ってくるのは毎回同じ。石を海に投げ込んだみたいに、何の反応もない。

 莉緒はまるで、彼の世界からきれいさっぱり消えてしまったようだった。

 吉野結人の胸の奥に、ふいにひやりとした焦りが差し込む。

 もうすぐ1か月だぞ。まだ気が済まないのか?

「結人?」

 小林莉那の甘くやわらかな声が、彼の思考を断ち切った。

 彼の隣に腰を下ろした彼女は、足を痛めているせいで片方のハイヒールを脱ぎ、わずかに眉を寄せながら足首をそっとさすっている。

 だがその視線は、さりげないふりをしながらもずっと吉野結人に向けられてい...

ログインして続きを読む