第10章 ふさわしい人にその座を譲る

平山亜美の視点

坂井陽もさすがに、自分がまずいことを言ったと気づいたのだろう。顔つきが、わずかに引きつる。

「いや、違う。べつにあいつが好きってわけじゃない。ただのたとえだよ、たとえ」

それを聞いた瞬間、怒りを通り越して笑いがこみ上げた。

「坂井陽。私、誰かと比べられるような関係、いらない」

「亜美……」

「出てって!」

私はケーキをつかむと、坂井陽ごと玄関の外へ突き返した。

「うちに来ないで。二度と顔見せないで!」

勢いよく扉を閉める。閉まった向こうからなお、坂井陽の怒鳴り声が飛んできた。

「平山亜美、おまえ絶対後悔するからな!」

私はそのまま扉にもたれ、ずるずると床...

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