第16章 やはり電話一本もなかった

平山亜美の視点

 夜の帳に、色とりどりの花火がどん、と大輪を咲かせた。瞬く間に、空の半分がまばゆく染まる。

 どうやら、広場の反対側にある住宅エリアで祝い事でもしているらしい。

 遊園地みたいな大がかりな花火ショーじゃない。けれど、不意に出会ったその華やぎには、また違ったロマンがあった。

「きれい……」

 見上げたまま、思わず小さくつぶやく。

 夜風がすうっと強まり、肌にひやりとした冷たさを運んできた。

 思わず自分の腕を抱く。

 次の瞬間、肩にふわりと重みが落ちた。よく知る、冴えた香りをまとった温もり。

 宮下駿介のスーツの上着だった。

 まだ彼の体温が残るその上着は、...

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