第28章 彼にキスしたい

平山亜美の視点

 スマホがぶるりと震え、画面がふっと明るくなる。差出人は知らない番号だった。

 どうせまた広告だろう。最初は無視するつもりだった。

 けれど指先が画面を払った瞬間、なぜかそのまま開いてしまう。

 文面はない。あるのは、数枚の写真だけ。

 その一枚目を見た途端、私は凍りついた。

 薄暗い路地の入り口。背景はたぶん、バーの裏口。

 坂井陽がわずかに顔を傾け、その頬に桜井有紗が背伸びして唇を押し当てていた。腕は親しげに彼の首へ回されている。

 陽は少し虚を突かれたような顔をしていた。でも、突き放してはいない。

 二枚目。

 陽は大きな缶ビールをぐいとあおり、喉仏...

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