第40章 彼は自分のことで手一杯で、お前を助けには来ない

平山亜美の視点

 坂井陽がぎょっとしたように顔を上げ、涙でぐしゃぐしゃになった私の顔を睨みつけた。

「宮下駿介……?」

 歯ぎしりするみたいに、その名を反芻する。

「こんな時に……お前が真っ先に思い浮かべるのが、あいつかよ!? 平山亜美、まだ『何もない』って俺を騙すつもりか!? この……クズ!」

 最後の二文字は喉が潰れるほど怒鳴り散らし、坂井陽は理性の糸が切れたみたいに、私の体に残っていたわずかな布地をさらに乱暴に引き裂いた。

「助けに来る? 来れるわけねぇだろ。あいつ、自分の身も危ねぇんだぞ! 生死の境を彷徨って病院にいるんだぞ、どうやってここまで来てお前を救うんだよ!?」

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