第42章 少しわがままになってみる

平山亜美の視点

 私は呆然とした。あまりに唐突で、彼が何を言い出したのか、すぐには理解できなかった。

 「……え?」

 戸惑いのまま問い返すと、宮下駿介は私の向かいの一人掛けソファに腰を下ろした。

 「ドアなら、すぐ直せる。でも――こっちは?」

 そう言って、彼は自分の胸のあたりを指先でとんと叩く。

 「ここに負った傷。心に残った傷は、いつになったら癒える?」

 まさか、そんなことを聞かれるなんて思ってもいなかった。私はその場で固まった。

 心の傷――。

 あるに決まってる。

 あんなふうに、あと少しで踏みにじられそうになった恐怖が、今もまだ胸の奥にまとわりついて離れない...

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