第45章 しつこい

彼女は歩み寄り、青ざめきった彼の顔と、今にも握り潰されそうな携帯電話に目を落とした。その瞳の奥を、打算めいた鋭い光がひと筋よぎる。

結城永司は何も言わない。全身を包む空気は、触れれば切れそうなほど張り詰めていた。

相馬万珠もそれ以上は詮索せず、おずおずと口を開く。

「今、小福って聞こえた気がして……。小福が、どうかしたの?」

小福の名が出た途端、結城永司の顔色はますます険しくなった。

「別に。ただ、情のない誰かさんが、自分で3年も飼ってた犬まで見捨てたってだけだ」

その一言に滲む怨みは、鈍い人間でも聞き取れるほど露骨だった。

相馬万珠は内心でほくそ笑む。けれど表には、痛ましげで...

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