第52章 もう誰も君をいじめられない

望月朝夜は口をすすいでから、青い顔のまま出てきた。壁に手をつき、よろよろと、少しずつソファへ戻っていく。

たった十数日で、頬はこけ、別人みたいにやつれていた。

太田さんが水の入ったコップを手元に置き、声を落とす。

「望月様……かかりつけの先生をお呼びしましょうか。このままでは、お身体がもちません」

「大丈夫、太田さん」

朝夜は小さく首を振った。

「いつものことだから」

――知られてはいけない。

この子だけは。

瓦礫みたいに崩れた日々の中で、唯一、自分のものだ。

そう思った矢先、邸の門のほうからエンジン音が響いた。

太田さんの顔色がさっと変わり、慌てて脇へ退く。

結城永...

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