第百十七章

「雪菜、私を見なさい」

雪菜は機械的に眼球を動かし、虚ろな視線を葵の顔に向けた。そこには一切の生気がなく、まるで操り人形のように大人しく口を開く。

「……はい」

葵はわずかに頷き、膝の上で指先を軽く叩きながら言葉を継いだ。

「今から、あなたの記憶に一つのルールを刻み込むわ」

彼女は少し身を乗り出し、雪菜の焦点の合わない瞳を真っ直ぐに射抜いた。その声には、いかなる拒絶も許さない絶対的な響きがあった。

「一番大切に想う人からの愛を感じられなくなった時、あなたは躊躇うことなくその人を傷つけ、取り返しのつかないダメージを与えるの」

その言葉が落ちた瞬間、雪菜の体がビクッと震えた。虚ろな...

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