第百八十四章

「昨日の夜よ。あんた、荷造りしてたから言わなかったの」梨乃は顔色一つ変えずに嘘をついた。「どうせ私が行っても足手まといになるだけだし。先輩とゆっくり見てきなよ。焦らなくていいから、終わったら電話して。私、タクシーで帰るから」

言い終えるなり、葵が口を挟む隙も与えず、梨乃は電話の向こうの正美に向かって言った。

「先輩、葵が今からそっちに向かいますから。もう少しだけ待っててあげてくださいね」

「ああ、問題ないよ」正美は笑いながら応じた。「家で待ってるから」

電話を切ると、葵は呆れたように梨乃を見た。

「あんた、絶対わざとでしょ」

「わざとって何よ、本当に用事があるんだってば」梨乃はぺ...

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