第52章

葵はスマホを握る手をぴたりと止め、顔を上げた瞬間、和也の底知れぬ瞳と真っ向からぶつかった。

彼はドアの前に、微動だにせず立っていた。

ただ静かにそこにいるだけで、冷気を放つ氷の彫刻のようだ。

和也の視線は、まっすぐに葵の顔へ注がれている。

その空気を察した梨乃は、慌てて立ち上がった。

「あ、あの……急に思い出したんだけど、スマホの充電ケーブル忘れちゃって。ちょっと買ってくるね」

「部屋を変えろ」

和也が口を開く。有無を言わせぬ響きだった。

梨乃は無意識に生唾を飲み込み、声を震わせた。

「えっと、それは……」

「経費で落とす」

和也は冷淡に告げた。

「スイートを取って構...

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