第177章

鳴瀬颯真も、考えなかったわけじゃない。だが、下手をすれば星川千奈を完全に怒らせ、二人の間に残った最後の接点さえ、断ち切られてしまう。

窓際で煙草を一本吸い、匂いが抜けるまで風に当たってから、彼はボランティアの活動エリアへ戻った。

物置の前を通りかかったとき、中から聞こえてきた会話に足が止まる。清水四葉と千鳥結亜の声だった。

「結亜、三年前に千奈が流産したとき、あなたが付き添って病院に行ったんだよね。あれって……本当なの?」

清水四葉の声には、ためらいが混じっていた。

「本当だよ。最初から最後まで私が一緒だった。手術のあとも、私が送って帰った」

千鳥結亜は迷いなく言い切る。

清水...

ログインして続きを読む