第180章

「俺ひとりで歩ける」

鳴瀬颯真は苛立ちを隠さない声でそう吐き捨て、支えられていた腕を振りほどいた。その瞬間、少し先に立つ星川千奈の姿が目に入り、息を呑む。

「……千奈」

白鳥雪奈も彼女に気づき、丁寧に会釈した。

「西園寺奥さん」

星川千奈は酔いが一気に引いたように目を瞬かせ、肩のショールをかき寄せると、二人に小さく頷いた。だがそれきり、何事もなかったかのように脇をすり抜け、足を止めることなく廊下の奥へ消えていく。

その背が曲がり角の向こうに消えるまで、鳴瀬颯真は視線を外せなかった。

白鳥雪奈は横目で彼の様子を窺い、探るように口を開く。

「鳴瀬社長、西園寺奥さんとは……お知り合...

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