第191章

星川千奈は身を翻した。彼の表情を確かめる間もなく、鳴瀬颯真に抱き上げられ、玄関脇のコンソールの上へとそっと乗せられる。

「鳴瀬颯真……」

意外そうに見上げた千奈の両脇に、颯真が腕をつく。逃げ道を塞ぐように囲い込み、吐息が触れる距離まで顔を寄せた。沈んだ眼差し。冷えた顔つき。

千奈は逸らさない。まっすぐ受け止める。

近すぎる距離で、颯真の呼吸が荒くなる。熱を含んだ息が、肌を焦がすみたいにまとわりついた。

その奥にあるのは、耐え忍ぶ気配と、ぎりぎりの自制。

数秒、沈黙のまま見つめ合って、颯真が掠れた低い声を落とした。

「さっきの言葉、もう一回言え」

「どれのこと?」

酒気を帯び...

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