第234章

フランスの城にいる星川千奈は、足を止めて車椅子の男へと近づき、その顔をはっきりと見た。

その瞬間、心臓を鋭利な刃で貫かれたみたいに、息が詰まるほど痛んだ。

ぽとり、と。

手にしていた包帯が床へ転がり落ちる。

――鳴瀬颯真。

かつてJ市の財界で、風向きひとつで潮目を変えるほどの男だった鳴瀬颯真。

けれど、目の前の彼は痩せ細り、ぶかぶかの病衣が骨ばった身体に空しく揺れている。

伸び放題の髪が目元を覆い、黄ばんで乱れていた。

精悍で端正だった顔立ちは見る影もなく、頬骨は不自然なほど突き出し、頬は深く落ち窪んでいる。

そして、星川千奈の目を裂くように痛めつけたのは――彼の脚だった。...

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