第56章

鳴瀬颯真は苛立ちを隠さず命じた。

「星川千奈に代われ」

『鳴瀬さん、人の話、通じないの?』

受話器の向こうで風見逸央が鼻で笑う。怒気など意にも介さない声音だった。

鳴瀬颯真はスマホを投げつけそうになりながらも、次の瞬間――別の声が割り込んだ。

「……誰の電話?」

星川千奈だった。

「鳴瀬颯真」

風見逸央が淡々と答える。

一拍の沈黙のあと、掠れた声が落ちてくる。

「……もしもし」

力がない。息も浅い。

彼女が体調を崩していることは、鳴瀬颯真ももう知っていた。

「星川千奈……」

鳴瀬颯真が口を開きかけると、彼女は先に言った。

「用がないなら、切る……」

「いや、聞...

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