第185章

「やめて、言羽、お願いだからやめて!」

上原桃華は慌てふためいた。

千野言羽は狂気の人だ。自分の思い通りにならなければ、何でも口にする。

上原桃華は今は千野言羽を怒らせるわけにはいかないと悟り、涙をぼろぼろ流しながら小さく身をかがめた。

「言羽兄さん、私がずっと真面目にあなたのこと守ってきたことを考えて、お願い、今回だけ助けて……」

千野言羽が何を聞きたがり、どんな頼み方を好むかを知っている上原桃華には、それは朝飯前だった。

星谷由弥子の前で屈辱を受けた上原桃華は、当然のように千野言羽を持ち上げた。

彼女の思惑通り、千野言羽はそれを喜んだ。

去り際には、内から外まで喜びに満ち...

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