第279章

上原健介の温和でありながらも冷ややかな声がドア越しに響き、まるで雷鳴のように上原桃華の心で炸裂した。

心臓がドクリと跳ね、瞬時に混乱が広がる。

彼女はその場で呆然と立ち尽くし、頭の中が真っ白になった。

「桃華?」

上原健介は変わらぬ口調で続けた。

「聞こえているか?」

上原桃華は口を開いたものの、声は少しも出てこなかった。

「桃華? 開けなさい」

数回呼んでも返事がないため、上原健介は不安げに眉を寄せた。

以前、上原桃華が自殺を図ったことを思い出し、ドアを叩く手が強くなる。

「執事、鍵を持ってこい」

上原健介は上原桃華の身に何かあったのではないかと案じ、即座にドアを破っ...

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