第435章

天宮和人はコーヒーカップをデスクに置いた。カチャリ、と陶器とガラスがぶつかる硬質な音が響く。

「来月の十八日は、星谷由弥子の誕生日だ」

彼はアシスタントの軽口に取り合うこともなく、淡々と指示を下した。

「プレゼントを用意しろ」

「承知いたしました、天宮社長。して、ご予算の方は……」

「予算は設けない」

風岡の心臓が、ドクリと嫌な音を立てた。「予算なし」。天宮社長の口から出るその言葉は、「あの会社を買収しろ」と言われるよりも恐ろしい意味を持つ。それはつまり、単なる高額商品を探すのではなく、星谷由弥子という女性を心から満足させる「何か」を見つけ出せということだ。難易度がエベレスト級に...

ログインして続きを読む