第496章

星谷由弥子のその一言で、林田日菜の瞳が欲望にギラリと光った。

夫に冷遇され、不満を募らせ、それでいて会社の核心機密を知り得る立場にある女。

これこそまさに、向こうから葱を背負ってやって来た鴨カモだ。

パーティーが終わる頃には、日菜は由弥子に凭れかかるようにして見送った。濃厚な香水の匂いが、頭痛を誘うほどに鼻をつく。

「ねえ由弥子、私たちみたいな人間は、いつだって自分のために逃げ道を用意しておかなくちゃ」

日菜は声を潜め、由弥子の耳元に吐息がかかるほどの距離で囁いた。

「考えたことない? あのプロジェクトのデータを……持ち出して、外の人間と組むこと」

由弥子の足がぴたりと止まる。...

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