第77章

斉藤国武は気にも留めず、ただ自分が罵倒して気持ちよくなることだけを考えていた。

星谷邦男も同じく怒りに任せて口汚く罵り返し、二人は板一枚隔てて激しく言い争っていた。

自分が斉藤国武の相手にならないと悟った星谷邦男は、矛先を星谷由弥子に向け変えた。

「由弥子、このまま彼にでたらめを言わせ続けるなら、お前に代償を払わせるぞ」

「ほう、また脅しかい。お袋の力を借りずに自分でやってみろよ」

斉藤国武は全く怯む様子もなく、まだ泣き喚いたり暴れたりする段階にすら至っていなかった。

星谷由弥子は突然虚しさを感じた。自分は本当に滑稽だ。星谷邦男はたった一人の人間を使うだけで、自分をしっかりと縛り...

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