第82章

天宮和人が提供した住所は辺鄙な場所にあった。道を進むにつれて、人の気配はますます希薄になっていく。

星谷由弥子は車を小さな路地の前に停め、降りて少し離れた階段へと歩み寄り、前方を少し物思いに沈むように見つめていた。

「弥子ちゃん、目的地に着いたの?」白石安広も車から降り、星谷由弥子の視線の先を見やった。「なんで前の刑務所を見てるの?」

「別に何でもありません」星谷由弥子は視線を戻し、気にしていないような素振りを見せた。「行きましょう、目的地はこの先ですよ」

そう言って小路を回り込み、一番奥にあるレンガ造りの家へと向かった。

ここはスラム街で、帝都で最も荒廃した地域だった。立地条件が...

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