第100章

日向雫が顔を上げると、坂本時佐が足早にこちらへ向かってくるのが見えた。

「先輩? どうしてここに……」

坂本時佐は彼女のそばまで来て、無事であることを確かめてから、ようやく息を吐いた。続けて、事情を手短に説明する。

「宴会場に着いたところで朱音に会ってさ。雫が檜山社長に付き添って病院へ行ったって聞いた。心配で、飛んできたんだ」

それから彼は檜山伊美へ向き直り、軽く会釈して、場にふさわしい穏やかな笑みを作った。

「檜山社長。先日、家のほうで急用ができまして、急きょ海外に出ておりました。前回の入札に参加できなかったのは残念です」

協業やスタジオへの見えない圧力には一切触れない。まるで...

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