第16章

日向雫は深く息を吸い、指先を無意識に下腹へ添えた。掌のぬくもりで鈍い痛みをやわらげながら、淡々と返す。

「……分かった」

ソファの肘掛けに手をつき、ゆっくり立ち上がると、古楽器を入れたケースを抱えて書斎へ運んだ。

書斎のキャビネットを開ける。薄く埃をかぶった画板が、そこにあった。

胸が、きゅっとつまる。冷たい木枠を指でなぞるだけで、どうしようもなく痛い。

――先生が卒業祝いにくれたもの。

日向雫は慎重に画板を机の前へ運び、柔らかな布でそっと拭いた。埃が払われ、素木の色が少しずつ甦っていく。

鉛筆を握った瞬間、手の甲の古傷が鋭く疼いた。指先まで震えが伝わる。

歯を食いしばり、線...

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