第19章

日向雫の心は、ぴくりとも揺れなかった。湧いたのは怒りでも悲しみでもなく、ただ――馬鹿馬鹿しさだけ。

彼女は椅子を後ろへ引き、立ち上がる。椅子の脚が床を引っ掻き、キィ……と耳障りな音が書斎の気まずさを断ち切った。

「もう遅いし、休むわ。今夜は客間で寝る」

言い終えるより早く、手首が鷹司蓮矢に掴まれる。

「客間は雨宮静佳のために空けてある」

日向雫の瞳に、氷みたいな嘲笑が浮かんだ。ドアの外に立つ雨宮静佳へ一度視線を流し、すぐ鷹司蓮矢へ戻す。

「そう。じゃあ、私が主寝室に置いてたパジャマ、どうして彼女が着てるの?」

鷹司蓮矢の動きが、ぴたりと止まった。顔に一瞬、理解できないという色が...

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