第212章

鷹司蓮矢は、パソコンの前に長いこと座り続けていた。

上田直樹がドアを開けて入ってくる。書類を手に、デスクの前まで来ると両手で差し出した。

「鷹司社長、こちらの書類、サインをお願いいたします」

鷹司蓮矢は受け取り、顔を上げて彼を見る。

上田直樹は、空気がいつもと違うのを敏感に察した。背筋がこわばり、呼吸を浅くする。探るように口を開いた。

「鷹司社長……ほかに、私にお手伝いできる仕事はございますか」

ボスに“用があるなら、先回りして聞く。そういうものだ。

同時に、上田直樹は内心で祈っていた。

雨宮静佳の件でさえなければ――何でもやる。

顔の広さだけは自負がある。実際、頼めば通る...

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