第220章

画面の向こうで、日向雫はふっと動きを止めた。瞳孔が、わずかに縮む。

正直なところ、いまの彼らは「ネットの知り合い」と呼ぶにも微妙だ。

どこまでいっても、利害が一致しているだけの関係。そんな相手が、いきなり本名を訊いてくるなんて――想像もしていなかった。

教える……?

雫の指が、キーボードの上で宙に浮く。

いまの彼女は異国に身を潜めている。過去を晒したくない。余計な縁も増やしたくない。

数秒、迷ってから、そっと一行だけ打ち込んだ。

【シズクでいいよ。この呼び方、好き】

日向雫は、他人と呼べる距離を――いちばん安全な距離を選んだ。

鷹司蓮矢は視線を落とす。

その瞳の奥で、言葉...

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