第26章

日向雫はスマホの画面を見つめたまま、ほんの少しぼんやりしていた。

これまでの人生、彼女の意識の大半はずっと鷹司蓮矢を中心に回っていた。

何が好きで、何が苦手で、どんな味を好み、どんな空気に居心地のよさを感じるのか。

そんなことなら、何も見なくても言えるくらい頭に入っている。

けれど、彼以外の誰かの好みを、ここまで気にして覚えようとしたことはほとんどなかった。

そのくせ、坂本時佐だけは少し違う。

彼は、自分が甘すぎるものを食べないことも、あっさりした味を好むことも、ちょっとした癖まで覚えている。

そう思うと、今夜の食事だけは適当に済ませる気になれなかった。

あれこれ悩んだ末、彼...

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