第29章

「……無理だよ……」

雨宮静佳が鼻をすすり、小さく息を震わせた。

「蓮矢。あのとき鷹司グループが倒産寸前で、あなたは資金繰りに追われてた。ちょうど海外に共同案件があって――」

「上田雨子先生は、肝心なリソースを日向雫に渡した。私は彼女に勝てなくて、国外に出るしかなかったの。もっと稼いで、あなたを助けたかったから」

「でも……戻ってきたら、全部こんなことになってたなんて……」

鷹司蓮矢の胸に広がっていた冷えが、じわりと別のものに置き換わっていく。

罪悪感。

結局、彼は情に弱い。

ゆっくりと手を上げ、腰に回された腕へ指先を触れさせる。するり、とほどく。

優しくはない。だが、さっ...

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