第31章

「……君は、本当に――いい性格してるな」

鷹司蓮矢は歯を食いしばり、喉を裂くような掠れ声でそれだけ吐き捨てた。

次の瞬間、踵を返す。迷いのない足取りで去っていく背中。

雨宮静佳はその場に立ち尽くし、遠ざかる背を見送った。顔色が、青くなったり白くなったり忙しい。

——

日向雫は、式典の最中だというのに、留学の準備まで同時に進めていた。

宴会場の喧騒は、廊下越しでも耳に届く。グラスの触れ合う音、笑い声、拍手。現実が薄い膜越しに響いてくるみたいだった。

雫がいるのは、廊下の突き当たりにある小さな休憩スペース。向かいに座る橋本先生が差し出した書類へ、視線を落とす。

橋本美夜——上田雨...

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