第34章

「安心して。赤ちゃんは無事だよ」

坂本時佐はベッドの縁に腰を下ろし、指先をそっと柵に添えた。声は驚くほど柔らかい。

日向雫の張りつめていた背中から、ふっと力が抜ける。

彼女は反射的に下腹部をかばった。

「ありがとうございます、先輩」

「遠慮するなよ」坂本時佐は小さく笑う。「医者の話だと切迫流産だって。間に合ってよかった。できれば二日ほど入院して様子を見たほうがいい、ってさ。しっかり休んで、余計なことは考えない」

「二日も入院は……無理です」日向雫は首を横に振った。

離婚届の手続きはまだ。祖父の誕生日の宴席も目前。留学の段取りも詰めないといけない。

やるべきことが、あまりにも多...

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