第38章

おじい様はいきなり激しく咳き込み、腰を折って胸元を叩いた。身体じゅうが小刻みに震えるほどの咳だ。

日向雫と鷹司蓮矢の視線が外れた一瞬を狙い、目だけで執事へ素早く合図を送る。

「大旦那様!」

執事は即座に察し、あらかじめ用意しておいた赤い水を染み込ませたハンカチを握りしめて小走りに寄った。ベッド際へぐいっと割り込み、縁に立っていた日向雫をかろうじて押しのける。

不意を突かれた日向雫は身体がよろけ、危うくその場に尻もちをつきそうになる。鷹司蓮矢が素早く腕を伸ばし、彼女の腰を抱き留めた。

熱を持つ腕が肌に触れた刹那、雫の全身にぶわっと鳥肌が立つ。反射的に振りほどこうとした――そのとき、視...

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