第53章

日向雫の心臓が、勝手に跳ね上がる。

恥ずかしいとか、照れているとか――そういう類じゃない。

ただひたすらに気まずくて、触れられたくなくて、拒絶が込み上げてくる。

鷹司蓮矢にも、その距離が痛いほど伝わっていた。

少し離れた隅では、鷹司の母の表情が、今にも氷の雫が滴りそうなほど冷えきっている。

その隣に立つ雨宮静佳は、スカートの裾を指が白くなるまで握りしめ、爪が皮膚に食い込みかけていた。

日向雫と鷹司蓮矢が人に囲まれ、褒めそやされているのを見ているだけで、胸の奥がちりちりと焼ける。眩しい、なんてものじゃない。目障りだ。

――どうして。

――どうして日向雫が、こんなものを手に入れる...

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