第54章

「おじい様、最近お身体の具合があまりよろしくなくて……」

名家になればなるほど、年を重ねるほど、こういう出来事を縁起として信じがちだ。

古楽器の弦が切れる。――それは、決していい兆しではない。

鷹司蓮矢が一歩前へ出て、日向雫の前に立ちはだかった。声は低く、冷え切っている。

「母さん、雫のせいじゃない。俺がちゃんと保管してなかった」

その場の全員が固まった。日向雫でさえも。

雫は顔を上げ、蓮矢の背中を見つめる。胸の奥に、驚きがじわりと広がった。

――私の代わりに、かぶってくれてるの?

蓮矢は横目で、おじい様の腕の中にある古楽器を一瞥する。表情は変えないまま、淡々と続けた。

「...

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