第56章

ドアの向こうで、鷹司蓮矢が二秒ほど黙った。

「分かった。外で待ってる。何かあったら、すぐ呼べ」

革靴が廊下の絨毯を踏みしめる音が、さらさらと遠ざかっていく――けれど、少し離れたところで止まった。

気配が消えない。

一枚の扉を挟んでなお、こちらを見張るような視線がはっきりと伝わってくる。重く、胸の奥に沈んでいく。

日向雫はようやく半分だけ息を吐いた。背中は冷や汗で濡れ、冷たさが背骨をつたって落ちていく。ぞくり、と勝手に肩が震えた。

向かいの席の白石先生は、怯えの残る彼女の顔を眺め、ふっと口元をゆるめた。

ほんの薄い笑み。なのに、言葉にしがたい含みが混じっていて、雫にはそれが妙に不...

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