第63章

鷹司蓮矢は隙を突いて男の胸ぐらをつかみ、そのまま拳を叩き込んだ。容赦のない連打。腕に乗った力がそのまま相手の顔面を潰し、運転手はみるみる鼻血と青あざでぐしゃぐしゃになっていく。

「やめてください! もう……!」

情けない命乞いが倉庫に響く。

「俺の女に手ぇ出したな。死にてぇのか」

鷹司蓮矢の目は、底の見えない闇みたいに冷えていた。

運転手をねじ伏せると、鷹司蓮矢はすぐさま踵を返し、床にしゃがみこんで日向雫の身体を抱き起こす。

「日向雫、大丈夫か」

声が、わずかに震えている。本人が気づかないほどの微かな揺れ。

雫は彼の胸に凭れ、鼻先に届いた雪松の匂いに、ぐらりと心が崩れた。見上...

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