第68章

「……雫……」

鷹司蓮矢は全身が火照り、無意識に腕の力を強めた。喉の奥で掠れた声を転がしながら、低く囁く。

「動くな……ちゃんと抱かせろ。少しだけでいいから」

額と額が触れ合い、熱い息が絡み合う。

そのとき、廊下から控えめなノックが三度。寝室の中は応えない。

執事は、祖父がわざわざ言いつけて持たせた菓子箱を抱えたまま、胸騒ぎを覚えた。さっきから、扉越しに聞こえてくる気配がどうにも妙だ。

――若いご夫婦に、まさか何か。

怠るわけにはいかない。

逡巡の末、礼儀も何も投げ捨てて、執事は勢いよく扉を押し開けた。

「おじい様よりお届けものを――」

言葉が、そこで途切れる。

薄いレ...

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