第83章

日向雫の視線が、無意識に少し離れた場所にいる鷹司蓮矢へと流れた。

蓮矢は雨宮静佳の話に耳を傾けるように俯いていて、横顔の輪郭は相変わらず硬質だ。それなのに珍しく、苛立ちを滲ませてもいない。

――意外だった。

雨宮静佳は海外で研修を受けてきたとはいえ、現場で揉まれた経験があるわけじゃない。

自分のチャンスだって坂本時佐がくれたものだ。けれど少なくとも、日向雫は檜山伊美と一度顔を合わせている。彼女は自分のデザインを、本気で気に入ってくれていた。

それに、坂本時佐と鷹司蓮矢は同じ人間じゃない。

利益にうるさい男が、こんな肝心の案件を――雨宮静佳みたいな子に任せるなんて。

言葉にできな...

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