第9章
新田朱音が日向雫から電話を受けたとき、彼女は客間で椅子に乗り、新しいシーツをベッドにかけているところだった。
枕を置き終えた、その瞬間。
コンコン、と控えめなノックがする。
扉を開けると、廊下に立っていたのは日向雫だった。紙みたいに青白い顔。腕の中には、バッグをぎゅっと抱え込んでいる。
「雫っ!」
朱音が慌てて身体をずらし、部屋の中へ招き入れる。視線がふと玄関の外へ滑り――そこに立つ男を見て、思わず息を止めた。
坂本時佐。
片方の肩に雨の濡れ跡が残り、涼しげな目元のまま、雫を穏やかに見つめている。
朱音は戸口から顔を出し、気を利かせたつもりで言った。
「坂本先輩、よかったら...
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