第3章
家に帰ると、リビングはしんと静まり返っていて、壁掛け時計が時を刻む音だけが響いていた。ちゃぶ台の上の家族写真に、無意識に目が向かった。私の十八歳の誕生日に撮ったもので、後ろには私の肩にそっと手を置く隆二が立っている。
この一枚が、すべての始まりを思い出させた。
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十二年前
「美香ちゃん、お父さんと暮らすか、お母さんと暮らすか、選んでいいんだよ」親権に関する内々の話し合いのはずの場で、家庭問題の弁護士は優しく言った。
私は大きすぎる椅子に座り、ぶらぶらと足を揺らしていた。お母さんは泣いていて、お父さんは罪悪感を滲ませた顔をしている。そして私は……ただ、ここから逃げ出したかった。
「どっちも嫌」十二歳の私は意地を張って言った。「私は隆二と一緒にいたい」
その場にいた全員が呆然とした。
弁護士は眉をひそめた。「美香ちゃん、それは……前例がないな。隆二さんは法的な後見人の選択肢には入らないんだ。彼はお父さんの連れ子だから……」
「そんなの関係ない!」私は椅子から飛び降りた。「私は隆二がいいの! みんなよりずっといいもん!」
お母さんはさらに泣き崩れた。「美香、わがままを言わないで……」
「わがままじゃない!」私は叫び返した。「二人が離婚するなんて、私に関係ないじゃない! 離婚してなんて頼んでない! なんで私が選ばなきゃいけないの? 私は隆二がいいの!」
隅に座っていた十八歳の隆二が立ち上がった。今よりもずっと痩せていたけれど、その瞳には同じように強い意志が宿っていた。
「俺が面倒を見ます」彼は言った。「責任は俺が持ちます」
お父さんは驚いた顔で彼を見た。「隆二、お前はまだ大学が……」
「アルバイトはできます」隆二は遮った。「美香には、二つの家の間を行ったり来たりさせられるんじゃなくて、安定した環境が必要です」
何時間にも及ぶ話し合いの末、ある取り決めがなされた。私が隆二と暮らし、両親は経済的な支援と法的な親権を維持する。それは正式な後見制度ではなく、どういうわけかうまくいった、ただの家族間の合意だった。
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今思えば、あの頃にはもう私の気持ちは変わっていたのかもしれない。妹が兄に抱く依存心ではなく、もっと複雑な……独占欲のようなものに。
隆二の家に引っ越した最初の夜、彼が私のためにベッドを整え、枕元にナイトライトを置いてくれたことを覚えている。
「怖かったら呼べよ」彼は言った。「隣の部屋にいるから」
その守られているという感覚が、とても安心できた。他のどの家よりも。
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三年後、深夜のリビング
十五歳の私は、リビングでこっそりと深夜映画を観ていた。いわゆる「恋愛映画」というやつだ。画面の中では男女の主役がキスをしていて、私は顔を赤らめ、心臓をドキドキさせながら見入っていた。
「何見てるんだ?」
驚いてソファから飛び上がりそうになった。いつの間にか階下に下りてきていた隆二は、シンプルなTシャツにパジャマのズボン姿で、髪が少し乱れていた。
「な……何でもない……」私は必死でチャンネルを変えようとした。
隆二は歩み寄ってきて、画面の情熱的なキスシーンをちらりと見ると、すぐに眉をひそめた。
「こういうのはお前が見るにはまだ早い」
「もう十五歳だよ!」私は抗議した。
「十五はまだ子供だ」彼はリモコンに手を伸ばした。
私はとっさにリモコンを背中に隠した。彼がそれを取ろうと身を屈めたとき、二人の顔が不意にぐっと近づいた。彼のほのかなコロンの香りがして、長いまつ毛が見えた。
その時、彼は私の口元にお菓子の食べかすがついているのに気づき、そっと指で拭ってくれた。
「食いしん坊だな」彼は優しく言った。
その瞬間、心臓が口から飛び出しそうだった。
これって、兄妹の情愛じゃない。私は衝撃と共に思った。これは……恋に落ちるっていう感覚だ。
十五歳で、私は初恋というものを知った。相手は、義理の兄だった。
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それから、私は変わった。
十六歳の私は、やけに甲斐甲斐しくなった。
「隆二、お皿洗い、終わったよ」
「隆二、洗濯物も洗っておいたよ」
「隆二、好きだって言ってたコーヒー、買ってきたよ」
彼はいつも温かく礼を言ってくれたが、その目には常に、兄が妹を見つめるような慈しみの色が浮かんでいた。
彼があの女を家に連れてくるまでは。
あの週末のことは、決して忘れられない。友達の家から帰ると、リビングには金髪の美しい女性が座っていて、隆二と親密そうに話していた。
「美香、こちらは瑞希さんだ」と隆二が紹介した。
瑞希は私に甘く微笑んだ。「美香ちゃん、こんにちは! 隆二からよく聞いてるわ。すごく可愛い妹さんだって」
妹。
私は作り笑いを浮かべて挨拶をすると、二階へ駆け上がり、リュックに荷物を詰めて家を飛び出した。
近くの公園で一晩中座り込んでいた。寒くてお腹も空いていたけれど、どうしても帰りたくなかった。私は「可愛い妹」なんかじゃなく、自分の感情を持った一人の女なのだと、隆二に知ってほしかった。
夜が明ける頃、隆二が私を見つけに来た。
私よりもよほど憔悴した様子で、目は充血していた。
「美香、死ぬほど心配したぞ」彼はそう言って、自分のジャケットを私の肩にかけた。「どうして家出したんだ?」
「あなたには瑞希さんがいるでしょ。私なんていらないじゃない」私は意地を張って言った。
隆二は長いこと黙っていたが、やがて屈み込んで私の顔を覗き込んだ。「美香、お前はまだ若い。大人になってから恋愛をしなさい。いいな?」
「若くない!」私はほとんど叫んでいた。「もう十六歳よ! 恋が何かくらい、わかってる!」
彼の表情はにわかに複雑になったが、結局は優しく私の頭を撫でただけだった。
「いい子だ。家に帰ろう」
もしかしたら、まだ私にもチャンスがあるのかもしれないと、初めて思った瞬間だった。
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二十歳の誕生日、私は酔っぱらった。
隆二が初めてお酒を飲むのを許してくれた日だった。「もう大人だから、少し試してみてもいい」と彼は言った。
しかし私は飲み過ぎてしまい、朦朧とした意識の中で、今日まで後悔していることをしてしまった。
「隆二」私は彼の手を掴み、潤んだ目で見つめた。「あなたのことが、本当に好き」
彼は固まった。
隆二の表情は非常に複雑なものになった。彼は優しく私をソファに座らせた。
「美香、酔ってるぞ」
「酔ってない!」私は頑なに言った。「すごくはっきりしてる! 隆二のことが好きなの。あなたの彼女になりたい!」
彼はとても長い間黙っていた。あまりにも長くて、きっと断られるのだと思った。
やがて、彼は言った。「俺もお前のことが好きだよ、美香。でも、お前はまだ若い」
心臓が跳ね上がった。「それって、つまり……」
「大人になるまで待て」彼は言った。「たくさんの人に出会って、たくさんのことを経験するまで待つんだ。それでもまだ、同じ気持ちでいてくれたら……」
その瞬間、世界中が明るくなった気がした。
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それから私は、六年間待った。
六年間、私は自分を成熟させようと努力し、彼に近づけると思って隆二の会社でインターンもした。しかし彼は常に完璧な距離を保っていた。――冷たくはないが、決して一線は越えない。
仕事のことは気にかけてくれるし、病気になれば薬を買ってきてくれるし、誕生日にはプレゼントもくれる。でも、十八歳の誕生日のあの酔った告白がまるでなかったかのように、それ以上の曖昧な素振りは一切なかった。
私は何かを勘違いしていたのではないかと、思い始めていた。
直人が現れるまで、今夜の映画館での隆二の反応を見るまで、そしてさっきの車の中での彼の乱れようを見るまでは……
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直人から送られてきたメッセージに目を落とす。「美香、無事に家に着いた? 隆二さん、本当にいい人だね。明日雨が降るかもしれないから傘を持っていくようにって、わざわざ教えてくれたよ」
直人はいい人だ。――明るくて、温かくて、複雑な家庭環境もない。彼と一緒にいるのは楽だ。彼の考えを推測したり、一つ一つの表情を分析したりする必要がない。
でも隆二は……隆二は、私に全く違う感情を抱かせる。彼は私の思春期のときめきのすべてであり、大人になってからの執着のすべてだ。十二歳から二十四歳まで、少女から大人の女になるまで、十二年間ずっと彼を追いかけてきた。
直人の温かい抱擁や、惜しみない愛情表現、彼と一緒にいると感じるあの単純な喜びを思い浮かべた。
携帯が震えた。
隆二からのメッセージだった。「すまない、今日は我を忘れた」
