初恋の人は義理のお兄ちゃん

初恋の人は義理のお兄ちゃん

拓海86 · 完結 · 25.5k 文字

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紹介

婚約ドレスに身を包み、指に輝くダイヤモンドリング。周りのみんなからお祝いの言葉をもらっていた。

友人からの泣き声の電話がかかってくるまでは。

「お兄ちゃんが血を吐いて倒れたの!」

その瞬間、私の世界は崩れ落ちた。

会場に集まったゲストを、婚約者を置き去りにして、狂ったように病院へ駆け出した。後ろから婚約者の絶望と怒りに満ちた声が響く。

「結局、本当に大切な時は彼を選ぶんだな?」

そう。血の繋がりはなくても、この恋が12年間社会の偏見に縛られていても、もう他の人と結婚すると決めていても—彼の命が危険にさらされた時、私はすべてを捨てて彼のもとへ走ってしまう。

12歳でこの家に来て、15歳で恋に落ちて、18歳の酔った勢いでの告白は拒絶されて—まる12年間、この人を愛し続けてきた。彼は私の義兄で、守ってくれる人で、そして決して恋をしてはいけない相手...…

チャプター 1

 ソファに座り、スマホ画面の光を顔に反射させながら、私はいつもより速く鼓動する心臓を感じていた。

 私の写真アルバムには、直人と私の写真が少なくとも二十枚はあった。先週末のビーチでのショットから、昨夜のカフェでの自撮りまで。まるで戦いに備えて鎧を選ぶかのように、私は一枚一枚スクロールしていく。

「いよいよ、やるんだ」

 ある一枚の写真で指を止めた…夕暮れのビーチを背景に、直人の腕が私の肩に回され、二人とも幸せそうに笑っている。これが一番自然で、言うべきこと全てを物語っているように見えた。

 深く息を吸う。

 テキストボックスに打ち込んだ。【やっと見つけた、私の大切な人❤️】

 投稿ボタンの上で、指が数秒間さまよった。九年間。この九年間で、私がソーシャルメディアで正式に交際を公表するのは初めてのことだったし、しかも……こんなに直接的に。

「隆二が見る」

 その考えが、心臓の鼓動をさらに速くさせた。まあ、多分それこそが狙いだったのかもしれない。彼に見てほしかった。佐藤美香が、もう父親と一緒に渡辺家に越してきた十二歳の少女ではないのだと、彼に知ってほしかった。

 投稿ボタンを押した。

 スマホがすぐに狂ったように震えだした。通知が次々とポップアップし、【いいね】の数がスロットマシンのように跳ね上がる。大学の友人たちがコメント欄でお祝いを始めた。

【うそ、美香!ついに!】

【二人ともお似合いすぎ!】

【直人さん、幸せ者!】

【結婚式はいつ?ブライズメイドやりたい!】

 十六歳で初めてラブレターをもらった少女のように、私はにやけていた。だけど、本当に私の胸を高鳴らせていたのは、もう一人の人物の反応を待っていることだった。

 小百合のプロフィール写真が現れた。

【大胆なことするね。兄ちゃん、ブロックした?😏】

 私は素早く打ち返した。【あの人なんて関係ないでしょ?なんでブロックする必要があるの?私が誰と付き合おうと、彼に何の関係が?】

 送信。

(浮気してるわけでもあるまいし、なんで誰かをブロックしなきゃいけないのよ)と心の中で自分を弁護したが、正直、小百合の質問は認めたくない何かを突いていた。私は本当に隆二の反応を気にしていたし、彼の……何を待っていたんだろう?祝福?反対?それとも、何か別のもの?

 どうでもいい。こっちはもう二十四歳なのだ。誰を愛そうと私の自由だ。


 その頃、街の中心部にある渡辺建築事務所では、小百合が兄の仕事が終わるのを退屈そうにオフィスで待っていた。オフィスはキーボードを叩く音と、エアコンの作動音以外は静まり返っていた。

 隆二はコンピューター画面の建築設計図を、眉間にわずかにしわを寄せながら見つめている。三十三歳になっても完璧な体型を維持し、きれいに整えられた髭が彼を成熟して落ち着いた印象に見せていたが、最近仕事のストレスが多いことを小百合は知っていた。

 小百合のスマホが震え、画面に目をやると、彼女の目はすぐに見開かれた。

「マジか!」と彼女は叫んだ。

 隆二は顔を上げずに言った。「言葉に気をつけろ、小百合」

「これ見て」小百合はスマホを彼に突き出した。

 隆二はついに顔を上げ、インスタの画面に映る美香と、見知らぬアジア系の男の写真を見た。彼の表情は、瞬時に氷のように冷たくなった。

「こいつは誰だ?」その声は危険なほど低かった。

「土方直人。美香の大学の友達。付き合ってるみたい」小百合は慎重に兄の反応を観察した。

 隆二の顎の筋肉がこわばったが、彼は何も言わず、ただその写真を見つめ続けた。

 その時、小百合のスマホが再び震えた。美香からの返信を見て、彼女は思わず息をのんだ。

 隆二は彼女の表情の変化に気づいた。「今度は何だ?」

「えっと……」小百合はためらった。「美香から返信が」

「読み上げろ」

「隆二、多分……」

「読み上げろ」彼の声は、氷がグラスに当たるようだった。

 小百合は咳払いをし、蚊の鳴くような声で言った。「『あの人なんて関係ないでしょ?なんでブロックする必要があるの?私が誰と付き合おうと、彼に何の関係が?』」

 オフィスの気温が十度も下がったかのようだった。隆二の顔は青ざめ、こめかみの血管が脈打っているのが小百合にも見えた。

 そして、小百合を完全に呆然とさせる出来事が起こった。

 隆二は自分のスマホを取り出し、ためらうことなく、美香の投稿に【いいね】をしたのだ。

「隆二!」小百合は椅子から飛び上がりそうになった。「美香のインスタに【いいね】するなんて、九年間で初めてじゃない!」

 隆二は無表情のまま、コンピューターの画面に視線を戻した。「自分が何をしているかは分かっている」

 だが、小百合には彼の手が微かに震えているのが見えた。


 私はキッチンで水を注ぎ、落ち着こうとしていた。その時、スマホが軽快な音を立てた。

【いいね!】の通知。

 グラスを落としそうになった。

 渡辺隆二があなたの投稿に【いいね!】しました。

 一度、二度と瞬きをした。画面の文字は消えない。

 うそ、隆二が【いいね】した?

 九年間。この九年間、隆二は私のどの投稿にも【いいね】をしたことがなかった。見ていないわけではない、彼が見ていることは知っていた。時々、小百合が「昨日、隆二があなたの写真見てたよ」とか「隆二がお酒は控えめにしろって言ってた」と教えてくれたからだ。

 だけど彼は決して『いいね』もコメントもせず、まるで彼のソーシャルメディアの世界では、私が存在しないかのようだった。

 それが今、私が交際を公表してから三十分も経たないうちに、【いいね】を押したのだ。

 私はもう一度あの写真を見た――直人と私が抱き合って微笑んでいる、幸せそうで甘い写真。

 まさか…… 

 とんでもない考えが頭に浮かんだ。恋愛小説や韓国ドラマを見すぎたせいだ。この展開を知っている。ヒロインが新しい彼氏を見つけた途端、自分の気持ちに気づいた当て馬の男が、彼女を取り戻そうと必死に追いかけ始めるっていう、あの展開だ。

 馬鹿、美香。考えすぎだって

 でも……でも、なんで今?なんでこの投稿に?

 インスタの画面に目を戻すと、小さな赤いハートが、まるで狼煙のように、まだそこにあった。

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三兄:「新薬の開発が遅々として進まないのはなぜだ?」――彼女が治験をしなくなったからだ。
四兄:「どうしてこんなにつまらない脚本しか上がってこない?」――彼女がもう執筆しないからだ。
五兄:「この義肢は、なぜこんなに出来が悪いんだ?」――彼女が製作をやめたからだ。
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絶望の中で目にしたのは、かつて母が手にした科学界の最高栄誉であるトロフィー。
その輝きが、私に本来の自分を思い出させた。

私はエプロンを脱ぎ捨て、白衣を纏う。
もう誰かの妻でも、母でもない。一人の科学者として、世界を驚かせるために。

数々の賞を総なめにし、頂点に立った私を見て、元夫は顔面蒼白で崩れ落ちた。
震える声で私の名前を呼び、足元に縋り付く彼。

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かつて私を見下していたその瞳が、今は絶望と後悔に染まっていた。
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