第7章

街灯の下、雪が数えきれないほどの白い蝶のように舞っていた。私は直人の手を強く握りしめた。掌から伝わる温かさを感じながら。両親の家を出たばかりで、空気にはまだ夕食の残り香と、両家の親たちの満足そうな笑顔が漂っていた。

すべてが完璧と私は自分に言い聞かせた。これが私の望んでいた、普通の生活。

「美香」

直人が不意に立ち止まり、私に向き直った。彼のまつ毛に落ちた雪が、街灯の光を浴びてきらりと輝く。

心臓が速鐘を打ち始めた。直人はポケットから小さなベルベットの箱を取り出し、雪の中に片膝をついた。

「美香、結婚してくれ」。彼の声はわずかに震えていた。「一生、君の面倒を見させてほしい」...

ログインして続きを読む