第211章 怒り

夏目千尋は坂本光一とコアアルゴリズムの話をしていた。そのとき、視界の端に、背の高い黒い影がすっと差し込んでくる。

顔を上げる。

神崎雅臣がテーブル脇に立っていた。見下ろす視線は冷たく、彫りの深い輪郭の顔には、感情らしいものが一切ない。

「ずいぶん暇そうだな」

掠れた声。喉が焼けたみたいに荒い。

夏目千尋の笑みが、瞬時に消えた。

空気の変化に坂本光一も気づき、言葉を止める。夏目千尋と、隣に立つ男を交互に見て、戸惑ったように眉を寄せた。

「神崎社長、何か?」

夏目千尋は椅子の背に体を預け、淡々と返す。

神崎雅臣の視線が坂本光一へ落ちた。上から下まで、値踏みするように眺める。

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