第212章 満足できないのか?

神崎雅臣は肘掛けに拳を叩きつけた。

前席でハンドルを握る運転手がびくりと肩を跳ね、掌にじわりと汗が滲む。

「夏目千尋の家へ」

運転手は一瞬きょとんとしたが、すぐ次の交差点で慌てて切り返した。

三十分後、マイバッハが夏目千尋の邸宅の門前で静かに止まる。

神崎雅臣はドアを押し開け、階段を大股で上がり、インターホンを鳴らした。

二度も押さないうちに、内側から扉が開く。

夏目千尋は白のシルクのルームウェア姿で、髪を無造作に後ろでまとめている。もう寝るところだったのだろう。

玄関先の男を認めた瞬間、反射的に扉を閉めようとした。

神崎雅臣は素早く足を差し込み、扉の隙間を塞ぐ。

その力...

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